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ハラハラ帳

一通の年賀状。

大学時代の授業で、柳宗理先生の授業を受けなかったら、今の家具デザインの仕事にはついてなかった。大学での専攻は工業デザイン。同級生のほとんどは、車、家電、住宅、などのいわゆる大手の企業に就職。その頃は日本の企業は右肩上がりのまっ最中。当時日本にそんなに多くなかった工業デザイン専攻の学生などは、引く手あまた。そんな中、東京から自らジープを運転して、金沢の大学に授業に来られた柳先生の授業ほど、刺激的だったものはなかった。スライドで、アメリカのGMなどの派手な形状と沢山のライトを施した、車の後ろ姿に大きなバッテンマークを付けて、いいデザインと売れるデザインの違いを話される。特にアメリカの商業主義に毒された工業製品への痛烈な批判。そして「いくらボクが授業でいろいろ教えても、みんな、給料がいい、車や電気の大手メーカーに就職するんだよねぇ。」と。就職間近の学生達にも痛烈な言葉。それまで、工業デザインって、カーデザイナーが描くような、カッコいいレンダリングなどを描くものだと思ってた自分の頭は完全にリセット。こりゃ、ブラックボックスに外装をつけるようなデザインを目指しちゃイカン、家具のデザインを目指そうと考えた結果、柳先生に作品を見て戴き、紹介戴いた天童木工という東北の家具メーカーに入ることになったのを、つい最近のことのように想いだす。
昨年末12/25日、早朝に新聞で柳先生の訃報を知る。いろいろな時の柳先生の笑顔と言葉が、頭を巡る。お悔やみとお礼の弔電を送る。
年が明けた。今年は辰年。
配達された年賀状をめくっていると、その中に独特のイラスト。「あっ、」と。一目で柳先生の年賀状とわかる。12月の中旬に所員の方によって送られたのだろう。他界された柳先生からの今年の賀状は宝物。先生に教わったことに恥じないような仕事をしなければ、と、再度思い起こした年の始めの出来事。

毎年楽しみだったオリジナリティある独特のイラスト。
一通の年賀状。_d0032761_12533973.jpg

by hararana | 2012-01-03 12:51 | その他の話 | Comments(0)