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ハラハラ帳

一脚の椅子

昨年廃刊になった雑誌「室内」。家具やインテリアに関しては結構読み物が多くて(ま、発行人が山本夏彦さんだったし)、インテリアーデザイナーや家具デザイナーにとってはいい情報源でワタシも25年程定期購読していた。その室内の約33年前の表紙とアートディレクター浅葉克己さんによる表紙の言葉。
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この小さな模型の椅子から2年ほどして、柳宗理先生が最終模型と背の原寸石膏模型、それにすごい枚数の原寸図面(一脚の椅子の為に)を持って天童木工の工場に来られた。その時はその椅子を20脚ほど、仙台のショップや、柳ショップの為に特注で作った(その後にテーブルやアームチェーも)。工場の特性からこのようなムク材を多用したチェアーは随分と手間とコストも掛かった記憶がある。その時の柳先生自ら作ったという精巧な1/5の模型が事務所にあり、いつも眺めている。そして2回目の現寸試作品は30年間、自宅で愛用。材料はマコレ材で、経年変化で飴色に焼けて、その風合いが又いい。いつまで経っても古くならないデザインというよりデザインにとって新しさとは何だろうと考えさせられる一脚の椅子。

左が1/5の模型、右は2回目の試作品(脚の中程がややモタッとしてるね、という指摘を受け修正)。
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学生時代にいつも、デザインが目指さなきゃならないものとは、アノニマスデザイン(無名性の、長い年月を掛けて改良、完成された道具)だと話されていたのを想い出す。そう、冠にデザイナーの名を付けないと売れないものって、時代の中で淘汰されほとんど残りはしない。このチェアーその後、東京のBC工房で2〜3年販売されたりもしたが、それもなくなって20年。
数年前に高山の飛騨産業で復刻。製作、販売され始めた。材はナラ材で,着色したものと生地色のもの。オリジナルのマコレ材で作ったものとは、微妙に味わいが違う。
by hararana | 2009-04-28 07:47 | デザインの話 | Comments(0)